レジデントのためのクリティカルケア入門セミナー
[第12回] 利尿薬の使いかた
連載 大野 博司
2011.03.07 医学界新聞(レジデント号):第2919号より
今回は,クリティカルケアにおける代表的な利尿薬を取り上げます。
CASE
Case1 三枝病変による虚血性心疾患,慢性心不全のある85歳男性。5日前からの労作性呼吸苦あり,ここ3日で夜間発作性起座呼吸,下肢の浮腫が強くなり,ERに搬送。O2 8 L/分でSpO2 93%,血圧150/40 mmHg,心拍数90/分,呼吸数25/分,体温36.5℃。両肺野喘鳴著明,両下肢浮腫。体重+2 kg。うっ血性心不全急性増悪でICU入室。ニトログリセリン原液5 mL/時およびフロセミド20 mg 2A静注し,徐々に呼吸苦改善し酸素化良好となった。
Case2 大腸穿孔による汎発性腹膜炎術後の65歳男性。挿管され人工呼吸器管理,鎮静・鎮痛の上,ICU入室。術後1-2日にかけて輸液負荷,人工呼吸器装着(IPPV管理)。3日目未明より利尿を促すため,20%アルブミン50 mLを2本投与し,フロセミド20 mg静注4時間ごと,アセタゾラミド500 mg静注を行い,日中に抜管。
Case3 糖尿病,高血圧,冠動脈三枝病変に対し冠動脈バイパス術をしている75歳男性。うっ血性心不全で来院。O2 10 L/分でSpO2 90%,血圧220/110 mmHg,心拍数110/分・不整,呼吸数30/分の起座呼吸の状態でICU入室。両肺野喘鳴著明。起座呼吸でギャロップリズム。フロセミド20 mg静注1時間ごとに3回繰り返すも反応悪い。ニトログリセリン原液とニカルジピン原液を使用し降圧を図り,フロセミド100 mg静注の上,100 mg/50 mL持続静注(2 mL/時)を開始。200 mL/時程度の排尿があり,徐々に呼吸状態改善した。
利尿薬の作用部位と副作用
利尿薬が作用する尿細管は,4つのパーツ(近位尿細管,ヘンレループ,遠位尿細管,集合管)から成ります(図)。
腎臓での尿産生は,まず糸球体で血液が濾過され原尿100 L/日ができます。それが,近位尿細管⇒ヘンレループ⇒遠位尿細管⇒集合管という流れで再吸収され,最終的に尿1-1.5 L/日ができます。つまり,原尿の99%が尿細管で吸収されます。この水の吸収はナトリウム吸収によるものなので,その程度に応じてどの部位で水の再吸収の割合が多いかがわかります(表1)。
それぞれの利尿薬の作用機序と副作用を表2にまとめました。
各利尿薬の特徴
1.ループ利尿薬〔ラシックス®(フロセミド)1 A=20 mg/2 mL,100 mg/10 mL〕
ヘンレループ上行脚のNa-K-Cl共輸送体に作用し,ナトリウム,カリウム,クロールの再吸収を阻害し,ナトリウム利尿を起こします。またこれらのイオン喪失により,尿細管細胞間を通してカルシウム,マグネシウムの再吸収も減少します(そのため,副作用として低カルシウム血症,低マグネシウム血症がある)。
ヘンレループでのナトリウム利尿が増加することで,遠位尿細管,集合管へのナトリウム負荷が大きくなるため,特に集合管ではナトリウムの再吸収と交換でカリウム,水素イオン(H+)の尿中排泄が増し,低カリウム血症,代謝性アルカローシスを誘発します。
ワンショットでの利尿反応が悪い場合,フロセミドを持続静注することで血中濃度が一定に維持され,効果を持続させることができます。最初に2-100 mgをワンショットしてから持続...
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大野 博司 洛和会音羽病院ICU/CCU,感染症科,腎臓内科,総合診療科
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